All Abbout掲載:2003年07月
甘酒は、総合ビタミンサプリメント
2002年6月から7月に放送されたNHK人間講座「発酵は力なり」小泉武夫(東大農学部教授)によると、甘酒には、ブドウ糖が20%以上含まれ、人間が生きていくために不可欠なビタミン類が豊富に含まれています。
麹菌が繁殖するときに、ビタミンB1、B2、B6、パントテン酸、イノシトール、ビチオンなど、すべての天然型吸収ビタミン群を作って米麹に蓄積させ、それが甘酒に溶出されてきます。ですから甘酒は、まさに総合ビタミンドリンクなのです。
また甘酒は天然の必須アミノ酸を最も多く含む飲物です。米の表面はタンパク質が多く、そこに麹菌が増殖すると、タンパク質分解酵素を出して分解し、アミノ酸に変えてしまいます。病院でよく行われる点滴は、ブドウ糖溶液とビタミン溶液とアミノ酸溶液を血管から補給するものですから、これと同様の効果が得られるということです。
腸内環境を改善するジャパニーズヨーグルト!!
さらに、ペプチド(たんぱく質を酵素で分解してできる物質)の一種である「アンギオテンシン変換酵素阻害物質」という物質は、天然の降圧剤と云われ本態性高血圧症の人に効果があります。
麹に由来する食物繊維とオリゴ糖が腸内環境を整えるので、便秘や肌荒れなどを予防・改善、体内の有害物質の排出に役立ちます。この働きにより、甘酒は「ジャパニーズ・ヨーグルト」と呼ばれているほどです。
江戸時代の夏ばて防止の栄養ドリンク
「甘酒」とはいいますが、これは米麹を発酵させたもので、でんぷん質を糖化させるため甘い飲み物になり、アルコール分は含まれていません。日本酒と原料が同じで、長時間発酵させると日本酒になるので、「甘酒」という名がついたのでしょう。
私も甘酒は、寒い冬に飲んで暖まるための飲み物だと思っていました。ところが、甘酒は江戸時代には、夏の飲み物として売られていたました。俳句の季語を調べると、甘酒は今でも夏の季語となっています。
江戸時代には、甘酒を夏バテ防止の栄養ドリンク剤として飲んでいたのだそうです。氷を浮かべて冷たーくいただく、あるいは暑い時こそ温めていただくのもよいですね。
甘酒をいろいろな味で楽しもう
おいしい甘酒の作り方は、料理のABCのサイトで、炊飯ジャーでの作り方をご紹介しています。ぜひご参考に。
甘酒にショウガを加えて飲むのは一般的ですが、他のアレンジでひと味違う楽しみ方もご紹介しておきましょう。
●ミルク割り
平安の昔には、甘酒の牛乳割りが流行ったとか。これが醍醐。つまり「最上の美味なるもの」の意味で、「醍醐味」という言葉もここに由来しています。まろやかでこくのある味わいです。甘酒に含まれる酵素が、牛乳の乳糖を分解し、吸収がよくなります。牛乳を飲むとおなかがゴロゴロするという人も安心です。
●レモン割り
カップ1杯の甘酒に、レモンゃユズなどのかんきつ系果汁を大さじ1ほどプラス。甘酒の風味が苦手という人にも飲みやすくなります。さっぱりとして香りよく、暑い日にはリフレッシュできそう。
高栄養飲料に変身
米を蒸して、種麹(麹菌を培養して得た胞子を乾燥したもの)をつけて、摂氏三十五度Cくらいの部屋で培養すると、米の表面に麹菌が繁殖します。これを米麹といいます。
甘酒を作るときは、米麹に付着した麹菌がアミラーゼという酵素(化学反応を助ける物質)を分泌し、ご飯のでんぷんをブドウ糖に分解します。これを、専門的には糖化といいますが、甘酒が甘いのは、糖化によって分解されたブドウ糖が多く含まれているからにほかなりません。
甘酒は、ブドウ糖を二〇%以上含み、ビタミンやアミノ酸も充満した非常に優れた高栄養飲料ということができます。そして、こうした甘酒の特徴は、病院で行われる点滴による栄養補給にも共通するのです。
江戸時代にも愛飲
江戸時代の人々は、死亡率が高くなる夏場に、甘酒を好んで飲んでいたようです。当時の文献には、江戸や京都、大阪といった当時の大都会では、夏になると多くの甘酒売りが街に出ていたと記録されています。おそらく甘酒は、夏バテ防止のために、今の栄養ドリンクのような感覚で利用されていたに違いありません。
甘酒に特に多い栄養
ぶどう糖:甘酒の甘さは、ごはんのでんぷんが麹菌の出す酵素によって、ブドウ糖に分解されるために生まれる。甘酒には、20%以上もぶどう糖が含まれている。
ビタミン:麹菌によってご飯が発酵される段階で、甘酒にはビタミンB1・B2・B6、パントテン酸、イノシトール、ビオチンなどのビタミンが新たに生まれる。
アミノ酸:米の表面に含まれるたんぱく質が、麹菌の出す発酵によって、アミノ酸に分解される。甘酒は、必須アミノ酸を最も多く含む食品の1つ。
著書 わかさ生活